腎不全の治療

■1.食事療法 (低蛋白食、低塩分食)■


理想体重あたり0.5g/kgの低蛋白食(動物性蛋白摂取を主体とした)と塩分3g/日の食事指導を前昭和大学内科(腎臓)教授 出浦照国先生と共同で行っており、透析開始を遅らせる効果があります。 毎月一日分の採尿で摂取蛋白量や塩分量が計算できます。



■2.人工透析■


◆a.血液透析(一般的な透析)   

人工的な拡散法で老廃物を除去するが、小分子物質しか取り除けないため、低分子蛋白による合併症(透析骨症、手根管症候群、貧血、透析独特の色素沈着、痒み)が避けられない。

b.血液透析ろ過(HDF)   

人工的な拡散除去に加え、腎臓の機能である「ろ過」を加え、あらゆる大きさ、種類の尿毒素を除去し、腎臓の働きに近づけた方法。ICU(集中治療室)で行っている「多臓器不全」の治療のひとつである持続透析ろ過と比べ一日あたりの薬剤使用量は5倍以上、時間当たりでは24倍以上のハイスペックな治療といえる。HDFの効果は関節痛、皮膚掻痒症、不眠、食欲不振、貧血、高血圧の透析困難症と呼ばれる諸症状の軽減や透析アミロイドーシス(解説1)(心不全、栄養不良、骨折のリスクとなる)を予防し延命効果が高い治療法です。

(@)オフラインHDF

通常透析に加え、ろ過液にサブラットB液等を使い、後希釈法で12リットル程度のろ過を行が、透析液の清浄化は特に必要としないため専用の機会(コンソール)を用意すれば手軽に行える反面、アミロイドーシス原因物質の血清β2ミクログロブリンはあまり低下せず、治療効果はやや劣る傾向にある。

(A)オンラインHDF

システム全体の清浄化が必要なためコストがかかるが、清浄化した透析液(エンドトキシンなし、細菌なし)をろ過液としても使えるため、多くの患者さんに行えると同時に、他の治療に比べ透析困難症や各種合併症が少なく延命効果が高いと考えられている。また各人の病態や目的に応じて(たとえば関節痛を緩和するのか、かゆみを緩和するのかなど)前希釈法、後希釈法を選択でき、オーダーメイド治療が可能。 ただし、どこでも行っているわけではないので透析患者26万人余の中で1万人に満たない方しか受けられない現実がある。

◆c.腹膜透析

5年以内であれば、自宅や職場で治療するため、生活のリズムをあまり変えずに済む場合が多い。 また、尿量が比較的保たれ、飲水やカリウム制限が少なく、食事管理が厳しくない。一方手術でおなかにカテーテルを挿入し、そこから腹腔内に透析液を貯留させ、尿毒素を取り除くため、腹膜炎や腹壁ヘルニアを起こすことがある。5年を過ぎるころから、腹膜機能が低下し、継続困難なこともあり、人工透析に切り替えることも多い。最大の欠点は硬化性腹膜炎で死にいたることもある。

◆d.腎臓移植   

シクロスポリン、タクロリムスなど新生代の免疫抑制剤の登場から(12年ほど前)、肝臓移植同様、拒絶反応を抑えることができ、飛躍的に成績が向上。
但し、薬の副作用として、高血圧、高血糖(糖尿病発症)、リンパ腫発生などの危険もある。
献腎移植(死体腎)は横ばいながら、生体腎移植は増加している。ドナー(提供者)の手術も内視鏡的に可能となり(佐久厚生連出身の外科医が開発)、負担が軽減されている。
当院は、長野赤十字、東京女子医大、佐久厚生連に紹介しています。

◆最後にすごく簡単に説明します。
『腎不全の治療』で、治療の種類を次のように説明しました。
@腹膜透析は自分の腹膜を使って、腎臓機能の6%に相当
A普通の透析(HD)は同8%に相当
BオンラインHDFは同20−30%に相当
C腎移植は40-50%に相当
(15名の移植。2020年3月10日現在)
が、ありますが、当院では、当然BとCの治療を勧めています。


※解説1
アミロイドーシス(amyloidosis)とは「アミロイド」と呼ばれる蛋白が全身の臓器の細胞外に沈着する疾患。特定疾患(難病)に指定されている。詳細 その分類の中のひとつに透析アミロイドーシスがあります。(長期透析患者の関節や軟部組織にβ2ミクログロブリンを前駆物質とするアミロイドが沈着する事により病変が引き起こされます) HDFに戻る


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