オンラインHDF 長野市内科(腎臓)

■オンラインHDFと透析液清浄化■


通常の透析液は、透析膜の小さな穴を介して、患者血液と透析液間で、物質(小さな尿毒素)を、「拡散」という形で交換・除去しています。そのため大きな毒素(血清β2ミクログロブリンなど)は除去できず、透析困難症や透析アミロイドーシスなどの合併症が避けられないことがわかってきました。この透析困難症や透析アミロイドーシスに関する研究が進み、予防のために、大きな尿毒素の除去(血清β2ミクログロブリンなど)の必要性が叫ばれてきて、透析膜(ダイアライザー)の高性能化(穴が大きくなり、大きな尿毒素も除去できる)が進みましたが、発熱することが増えたりや透析アミロイドーシスが逆に悪化する場合がありました。原因を探していくと、従来からの透析において、原料の薬液は無造作に床に置いてあったり(個人型コンソール)、十分な洗浄ができないタンク(セントラル型)で調合されており(透析液は直接体内に入ることが無いため)、エンドトキシン濃度(細菌の破片で、体内で炎症を起こす物質)はきわめて高く、場合によっては細菌も存在していることがわかりました。透析膜(ダイアライザー)の高性能化は、尿毒素が除去しやすい一方、透析液が体内に入ることにもなり(逆ろ過)、透析液内のエンドトキシンをはじめ、いろいろなパイロジェン(エンドトキシン以外の発熱物質)の体内への流入が、透析困難症や透析アミロイドーシスの悪化原因として考えられるようになり、透析液の清浄化が叫ばれるようになりました。つまり、従来のシステムでの透析では合併症の原因毒素の除去ができず、逆に発生を助長していたわけです。
ここでの第一のキーワードが透析液の[清浄化]です。
透析液正常化とは、皆さんが病院で行う点滴のクリーン度よりも、透析液内の細菌を存在させないのは当たり前で、その分解毒素であるエンドトキシンを検査感 度以下に保つというきわめて厳重な管理基準に適応させることを意味します。点滴は一日でもせいぜい2L(リットル)程度ですが、一回の透析治療は、最低で も120リットルの透析液を使用するため、汚染透析液使用では、発熱はもとより、最悪の場合、ショック死もありえるため、なおさら点滴(製薬メーカー製 造)より、清浄化する必要があるわけです。
第二のキーワードが[HDF]ですが、これは透析膜(ダイアライザー)の高性能化や清浄化でも透析アミロイドーシスなど解決しない合併症があり、HDF(透析ろ過)が考案されました。
HDF(腎不全の治療の種類:オンラインHDFを参照)の目的は、より自分の腎臓の働きに近い生理的な透析をする事で、通常透析では取りきれない尿毒素による各種合併症(当院の透析を参照)や、透析困難症を抑え、健康的な状態で延命効果を期待したものです。「ろ過」は本来の腎臓が持つ機能そのもので、すべての尿毒素を「流す」様なものと考えてください。
この場合、患者血液に直接「透析液」を入れ、攪拌し混ぜ合わせ、血球を除いて、尿毒素を搾り出すものです。言ってみれば、洗濯機の脱水みたいなものです。当然透析で問題になったエンドトキシンや細菌はもっと厳格な管理を要求されます。なぜなら透析液120 リットルに加え「ろ過」のために直接体内に、50〜60L(リットル)の透析液を注入するからです。細菌がいれば敗血症と同じことになります。このように オンラインHDFは極めてハイレベルの治療法と言えるもので管理が非常に困難で、コストもかかるため、26万余の透析患者中、数千人の方しか受けられないのが現状です。
以前の当院の研究結果では、血清β2ミクログロブリンを下げる(透析アミロイド−シスの予防)のに重要なことは、透析液清浄化(寄与率80%)、HDF(寄与率20%)でした。
つまり、透析液清浄化が、まず一歩として重要なことがわかっています。




いかにオンラインHDFが優れているかを証明した論文や透析医学会の統計(研究)、関連論文を載せました。

1.これは、 Kidney International 2006年4月号に搭載された論文で(腎臓分野でもっとも権威のある医学雑誌)ヨーロッパ(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス)における DOPPS(Dialysis Outcome and Practice Pattern Study)という共同研究からHDF(血液透析ろ過)対HD(通常透析)の死亡リスクについて検討し、非常に延命効果が高い事が判明しています。      

◆要点◆
ヨーロッパ5ヵ国の透析患者2165人について調べた結果、2165人のうちHDFを受けている患者は11.7%であったが、HD(通常透析)及びHDF(血液透析ろ過)にも下記のような違いがあり、結果的に死亡率が違った。つまりHDFの延命効果が証明されています。

透析の方式 通常透析膜による
HD
(再生セルロース系)
高性能透析膜によるHD
  (石油合成系)
少量液置換HDF
(オフライン=旧式)
大量液置換HDF
(オンライン=当院方式)
死亡危険率 この治療を受けている場合を基本とする(100%)
103%に上昇。
透析液の質が悪いと逆効果となることを示唆
死亡危険率は93%に低下と思われる
死亡危険率は65%に低下を証明


2.各治療法と導入後10年間の死亡のリスク・・・・ (10年後の死亡危険率が、通常透析に比べ、オンラインHDFでは約30%低下することを示しています)
出典:日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況(2001年12月31日現在)より 各治療法と導入後10年間の死亡リスク


3.アミロイドーシスが悪化するリスク・・・・(透析アミロイドーシスの発生危険度がオンラインHDFではほとんど無いことを示しています)
出典:日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況(2001年12月31日現在)よりアミロイドーシスが悪化するリスク


  

4.通常透析と清浄化後のHDFを行ったときの予想生存曲線(10年後オンラインHDFの場合生存率が96%と予想されており、通常透析の場合の予想は62%とされており、生存率の向上が示唆されています)
出典:川西秀樹腎と透析 51, 11-13, 2001 より
通常透析とHDFの生存率の違い



5.2019年Vol35 No5「臨床透析」(日本メディカルセンター発行)によると
オンラインHDF療法(2012年4月保険収載後)は、2017年12月31日時点で、70604人の
患者さんが受けており、I-HDF(間欠的HDF)は17105人で、合わせて87709人です。
保険収載前の2011年末のオンラインHDF患者数は4890人です。
(従来型のオフラインHDF患者数は8573人で、HDF全体としては13463人)。
保険適応後に、6.5倍に増えました。
2006年のKidney International
(Canaud,B.,Bragg-Gresham 2006;69;2087-2093)によれば、
死亡リスクが35%低減すると書かれています!!。
当院は1999年から、オンラインHDFを全患者さんに行ってきましたが、
上記に加え、貧血を改善した状態にすると(透析ガイドラインより)、
大幅なQOLの向上と生存率改善(健康寿命の改善)につながっていると考えています。

6.通常の透析の場合の透析時間別の生存率比較です。
オンラインHDFができない場合は、透析時間を増やす必要があります。






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